入口 > スポンサー広告 > スポンサーサイト novel > A Precious New Year(3)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2
--------

A Precious New Year(3)

「そうだろ。まさかもう忘れちまったか? すげえはしゃいでただろうが」
「ふふ、冗談さ。しっかり覚えてるよ。僕はラカムとは違うから、忘れたりしないよ」
「おいおい! 今それ言うのかよ」
 ノアはたまに意地の悪いことを言ってラカムをからかう。穏やかな外見とは裏腹に過激な毒舌を吐き出すノアを見て、そばにいた仲間が目をむいたのも一度や二度ではない。合わせて毒舌を振るうのはロゼッタくらいで、ラカムはやり込められるばかりだ。
「ったくよぉ、あれはノーカンだ、ノーカン! カウントするのは一緒に旅に出てからの分だけにしてくれ」
「わがままだなあ」
「忘れてたことをなかったことにするとは言わねえ。そのぶん旅に出てからあったことは……まあ、できるかぎり覚えとくからよ」
 恥ずかしいことを言った自覚があり、ラカムは頬をかいた。ところが、ノアは意地の悪い笑みを浮かべる。
「全部覚えてる……とは、言わないんだね?」
「だーもう、要求のハードルが高い!」
 ともすればラカムを糾弾しているとも取れる言葉なのに、声はどこか嬉しそうだ。ノアの言葉は煙に巻くようなものばかりで、ラカムは真意をはかりかねることが多いのだが、今の微笑みは本物に見えた。軽口を叩けることが嬉しい――多分、そうなのだろう。
「ラカムは、変わったなあ」
「ん?」
「前は……”絶対”って言う言葉を、よく使っていたよね」
「ガキの頃の話か? なんでお前はそう細かいとこまで……」
 また軽口で返してやろうと思った矢先、視界がほんのすこし暗くなった。
 そういえば、ノアの部屋は暗かったのだ。高原は、たったひとつのランタンと、彼の周りを漂うビットから発せられるほのかな白光だけ。
 ラカムはランタンを一瞥したが、ランタンは変わらず火を湛えていた。
「どうかしたのか?」
「……」
「おい、ノア」
「あ……うん、なんだい?」
 ノアはすぐにいつもの穏やかな笑みを浮かべた。だが、一瞬彼の表情が陰ったのを見逃すラカムではなかった。
「お前、起きてたんじゃなくて、眠れないんじゃないだろうな?」
「そんなことは」
「本当か? 今、すげえ疲れた顔してたぞ。一瞬だけど」
「僕が、疲れている? そんなことはないはずだけど」
「お前、それ本気で言ってんのか?」
 ノアが珍しくうろたえている。本心から「わからない」と言いたげだ。強めにラカムは問う。
「寝てないんだろ?」
「寝てない、というのは正しくない。寝る必要がないんだ」
「は?」
「……あ」
 しまった。顔にありありとそう書いて、ノアはぱっと口をおさえた。
「寝る必要がないって、どういうことだ?」


続く



スポンサーサイト
web拍手 by FC2
2017-02-05
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。